中学公民「裁判所のしくみ」についてまとめています。裁判所のしくみに関して、裁判の種類、裁判所制度、三権の抑制などにもふれています。それでは、中学公民「裁判所のしくみ」です。
裁判所のしくみの要点
法の種類ついては、憲法や国が作る法律、地方公共団体が定める条例などがあります。法の役割は、人々の権利を守り、社会の秩序を保ち、社会生活の中での争いや犯罪を裁く基準となります。
- 司法…法に基づいて紛争を解決すること。司法の中心となる裁判の仕事は、裁判所が担当します。
- 裁判所の種類…最高裁判所と下級裁判所(高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所)があります。
三審制
判決に不服な場合、上訴によって原則として3回まで織判が受けられる三審制を採用している。この制度は、裁判を公正・慎重に行い、人権の保障と裁判の誤りを防ぐことを目的とする制度である。判決に不服のある場合に、上位の裁判所に訴えることを 上訴といい、上訴には控訴と上告がある。
■ 控訴
控訴は、第一審の判決に対する上訴。つまり、第一審の判決に不服のある場合、次の上位の裁判所に裁判のやり直しを求めて訴えることをいう。
刑事裁判の場合…控訴はすべて高等裁判所に対して行う。地方裁判所は控訴審は行わない。
■ 上告
上告は、第二審の判決に対する上訴。つまり第二審の判決に不服のある場合、次の上位の裁判所に裁判のやり直しを求めて訴えることをいう。
特別上告…高等裁判所の判決に対して、違憲を理由として最高裁判所に上告すること。
跳躍上告…下級裁判所の下した第一審の判決に対して違憲・違法を理由に控訴を省略して、最高裁判所に申し立てる上告をいう。民事訴訟の場合は飛躍上告ともいう。
再審
判決が確定した後、裁判の重大な誤りが疑われる場合に行われます。やり直しの裁判。
裁判の種類
最高裁判所以外の裁判所を下級裁判所という。下級裁判所として、高等裁判所は全国8か所、地方裁判所・家庭裁判所は各都府県1か所と北海道に4か所 簡易裁判所は全国28か所に置かれている。
行政機関の違法な処分に関する訴訟(行政事件)も、現在ではこれらの裁判所で管理されるが、大日本帝国憲法下では行政裁判所が担当していた。
高等裁判
下級裁判所で最上級の裁判所。高等裁判所長官と他の裁判官で構成され、3名の裁判官の合議制が原則。地方裁判所の第一審に対する控訴審や、簡易裁判所が第一審を行った民事事件の上告審を行うが、特定の事件では第一審も担当する。
地方裁判所
原則的な第一審裁判所で、典型的な下級裁判所である。1名の裁判官が裁判を行う単独制が原則だが、3名の合議制をとる場合もある。第一審を行うほか、簡易裁判所が第一審を行った民事事件の判決について控訴審(第二審)を行う。
家庭裁判所
地方裁判所と同格で、特定の事件を裁判する。一般の民事・刑事事件は扱わず、離婚問題などの家庭に関する事件について、調停や審判を行う。また、罪を犯した少年の保護や、必要な処分を行う。罪を犯すおそれのある少年については、指導を行う。
簡易裁判所
常に1名の裁判官で事件を扱い、訴訟額が定額を超えない民事事件、罰金以下の刑にあたる刑などの第一審を行う裁判所。民事事件は地方裁判所へ、刑事事件は、高等裁判所に控訴することができる。
控訴審
第一審の判決を不服として、 第二審を行う裁判所に上訴することを控訴といい、控訴された 事件の審理を控訴審という。
民事裁判
民事裁判は、私人の間の争いについての裁判。
- 土地の所有権をめぐる争い
- お金の貸し借りをめぐる争い
- 離婚や子どもの養育権、相続などの家族間での争い
など
- 原告と被告…裁判所に訴えた人が原告。訴えられた人が被告。
- 行政裁判…国や地方公共団体を相手とって行う裁判
調停と審判の違い
- 調停…当事者の話し合いをうながして解決に導く方法。
- 審判…調停が不調の場合, 強制的 に行う解決する方法。
■ 民事裁判での手続き
- 提訴…自分の権利が侵害されていると考える人が、裁判所に訴えを起こします。
- 裁判所の審理…訴えた人(原告)と訴えられた人(被告)のそれぞれが 自分の意見を主張し合います。
- 判決…事件を担当する裁判官は、原告・被告の言い分をよく聞き、証拠や証人を調べて、法にもとづき判決を下します。
- 訴訟代理人…民事事件では、当事者は訴訟代理人(一般には資格を持つ弁護士がなる)の助けを借りるのがふつうです。各当事者から依頼された訴訟代理人のみで裁判が進められることもあります。
刑事裁判
刑事裁判は、犯罪行為について、有罪か無罪かを決める裁判。窃盗、殺人、放火、公務員のわいろ、暴動など、刑事裁判であつかう犯罪はすべて刑法などの法律に定められています。流れは、検察官が起訴→公判→判決となります。重い罪になる事件では、弁護人の出席必須です。
- 被疑者…罪を犯した疑いのある者。
- 起訴…容疑のかたまった被疑者が、検察官が被告人として裁判所に訴えること。
■ 刑事裁判での手続き
- 犯罪捜査…犯罪が起きると、警察官と検察官が協力して捜査します。罪を犯した疑いのあるもの(被疑者)を探し、証拠を集めます。場合によっては、被疑者を逮捕したり、勾留(刑事施設に拘束すること)したりします。
- 起訴…起訴は検察官が行います。検察官が取り調べて被疑者の容疑が固まると、被疑者を被告人として裁判所に起訴します。
- 公判…裁判官は、検察官と被告人側にそれぞれ証拠を出させて弁論のやり取りをさせ、 証拠調べをします。事実についての認定が終わると、検察官が裁判官に被告人の処罰を要求します(論告求刑)。
- 判決…裁判官は双方の主張や明らかにされた証拠によって事実を判断し、法律にもとづき判決を下します。→有罪の確定→刑の執行。
- 弁護人…その役割は検察官に比べて弱い立場の被告人の利益を守ることです。
- 検察官…放置しておけば社会秩序が乱れ、個人の人権も侵害されるおそれがある犯罪行為に対して、国家はその犯罪行為をした者に刑罰を科すこととしています。検察官は国家の代表として裁判所に、その要求をする役割をになっています。
裁判と人権保障
- 裁判官の令状がなければ、原則で逮捕や捜索できない。
- 拷問(ごうもん)などによる自白は証拠できない。自白の強要など行き過ぎた捜査を原因とする冤罪事件防止。
- 被疑者や被告人に、黙秘権を認めている。
- 有罪判決を受けるまで、被告人は無罪と推定される。
- 被告人に、公正で迅速な公開裁判を受ける権利を保障する。
裁判員制度
裁判員制度は、国民が裁判員として刑事裁判に参加して、裁判官と一緒に被告人の有罪・無罪や刑の内容を決める制度。司法制度改革の一環として、2009年から開始。一つの事件を、原則として6人の裁判員と3人の裁判官を担当する。
- 対象…殺人や身代金目的の誘拐など、重大な犯罪事件の第一審。
- 裁判員…国民で選挙権ある人の中からくじで選出。裁判官とともに、審理(公判に出席して、証人の話を聞いたり、証拠を調べたりする)、評議(裁判官や裁判員どうしで話し合う)、評決(有罪か無罪か、有罪の場合にはどのような刑にするかを決定する)に参加する。
裁判員制度の定着に向けて
- 裁判員制度の導入の狙い…裁判に国民の視点や感覚を反映させ、司法への理解と信頼を深めること。
- 定着のための取り組み…法律用語をやさしく言い換えたり、議論をわかりやすく整理したりして対応。
司法制度改革
司法制度改革は、日本で、裁判が利用しづらいことや費用・時間がかかりすぎるという批判から進められている。利用しやすい裁判制度にするための改革。時間をかけずに裁判を終わらせるための新制度の創設や全国どこでも法による紛争の解決に必要な情報・サービスを受けられるよう、総合法律支援の仕組みを整備が大切。
裁判制度に求められた改善点において、これまで日本の裁判制度について、次のような改善点の指摘が多くありました。
- 審理を迅速に進めて、判決を早く出す。
- 裁判にかかる費用を安くする。
- 一般の人にはわかりにくい判決文をわかりやすくする。
- 裁判に国民参加の制度を取り入れる。
- 裁判官や検事、弁護士を増やす。
など
利用しやすい司法制度をめざして
1990年代末からさまざまな取り組みが始められ、おもに次のような改革が進められました。
- 裁判の迅速化…2003年7月に裁判迅速化法が成立・施行され、第一審を2年以内のできるだけ短い期間に終わらせることが定められました。
- 裁判が身近になる総合法律支援のしくみづくり…トラブルをかかえた人が法律相談を受けたり、訴訟の助けを受けたりすることができるように、各地に拠点となる「日本司法支援センター(愛称:法テラス)」がつくられました。
- 法科大学院の開校…司法制度を一般の人が利用しやすいものにするために法律家の増加をはかるとともに、新しい法律家の養成機関として法科大学院が導入されました。
- 裁判員制度の導入…2004年に裁判員法が成立し、2009年から刑事裁判の第一審に国民が裁判員として参加する裁判員制度がスタートしました。
司法権の独立
中立公正であるべき裁判所は、国の他の機関 から独立していて、国会や内閣など他の政治権力からの干渉を受けないという原則をいいます。裁判を担当する裁判官に対し、国会や内閣などの外部の力が影響をおよぼさないように、裁判官が自ら良心に従い、憲法及び法律にのみ拘束されるという原則です。裁判官の罷免は、①心身の故障、②国会議員による弾劾裁判、③最高裁判所裁判官に対する国民審査のみ。
裁判官の独立
実際に裁判を行う裁判官はだれからも支配されたり、指示されたり、圧力をかけられたりしないという原則です。これを憲法では、次のように定めています。
- 憲法第76条第3項「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」
この憲法にいう「良心」とは、裁判官の信念や心情ではなく、適用する法の精神を意味しています。
裁判官の身分保障
司法権の独立のためには、裁判官の独立が保障されなければなりません。そこで裁判官の身分保障の制度を特別に一般の公務員より手厚くして、司法の独立を守ろうとしています。
<身分保障>
裁判官を辞めなければならない場合を, 憲法では次の四つと定めています。
- 心身の故障で職務を続けられないと裁判所が認めたとき。
- 弾劾裁判で罷免されたとき。
- 国民審査で不適格とされたとき(最高裁判所裁判官)。
- 法律の定める年齢(定年)にたっしたとき。
<生活保障>
定期的に相当額の報酬を受け、この報酬は在任中は減額されません。
裁判を担当する裁判官に対し、国会や内閣などの外部の力が影響をおよぼさないように、裁判官が自ら良心に従い、憲法及び法律にのみ拘束されるという原則です。裁判官の罷免は、①心身の故障、②国会議員による弾劾裁判、③最高裁判所裁判官に対する国民審査のみ。
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